アカルイカテイ
昭和14(1939)年に上梓された「明るい家庭」という1冊の本があります。家庭を明るく保つための女性のふるまい方をさまざまに説くその本は、冒頭、料理の味を生かすも殺すも塩次第だとの側室の説明に得心したという徳川家康のエピソードを引き、家庭において女性はいわば「調味料」の役割を果たすべきだと暗にほのめかし、はじまります。
しかし、引き合いに出された家康にとっては、まるで見当のつかない話かもしれません。なぜなら、そもそも日本において「家庭」や「家族」は、それまでのイエ制度に取ってかわるものとして明治時代にあらたにつくられた概念なのですから。
では、現代に生きるわたしたちには、どのように聞こえますか。
この展覧会では、明治大正生まれの作家から1980年代生まれの作家まで11人を取りあげ、彼女/彼らの創作活動のなかに家庭や家族がいかなる影を落とし、いかなる光を照らしているのかを見ていきます。それによって「明るい家庭」をアップデートし、この先の「アカルイ カテイ」実践の方法を探ってみたいと思います。 |