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平山郁夫―文化財赤十字への道―

掲載日:2014年4月15日
 尾道市瀬戸田町出身の日本画家・平山郁夫(1930-2009)は、仏教やシルクロード、世界の文化遺産などをテーマに、人類の悠久の歴史や人々の営みを、共感をこめて描いた作品で知られています。画家の没後5年に当たる今年、開催する本展は、代表作を含めた約80点により、初期から晩年までの画業の全貌をご紹介します。少年期の素描に始まり、郷里・瀬戸内の風俗を描いた牧歌的な初期作。釈迦の生涯を独自の発想と装飾的な表現で描いた仏伝シリーズは、清新な表現で画家としての独創性が強く打ち出された作品群です。また、現実の風景の背後に過去の歴史まで見通したようなシルクロードの情景には、壮大な歴史ロマンが感じられ、シルクロードの終着点である日本を描いた風景画からは、砂漠地帯とは異なる湿潤な風土が生む、緑豊かな自然美に対する生き生きとした感動が伝わってくるようです。

 仏教の来た道をたどり、シルクロードを旅した画家の生涯は、自身の被爆体験に根ざす平和への希求に満ちたものでした。救いを求める気持ちは仏教を主題とした作品につながり、仏教の源流に対する関心はシルクロードへの取材旅行へと結びついています。また、平和への祈りは、過酷な自然や戦争などによる人的破壊から、数々の文化財を守る活動にもつながりました。優れた文化財を人類共通の文化遺産として保存・継承する活動を通じて、異文化間の相互理解や世界平和に貢献しようとしたのです。本展では、遺跡や文化財を描いた絵画とともに、流出や散逸を危惧し、平山夫妻が長年収集してきた優れたシルクロードの美術品コレクションも併せて展示します。

 平和を求める心から生まれた創作活動と文化財保護活動。画業の変遷とともに、画家・平山郁夫のもう一つの祈りのかたちをご紹介することで、幅広い活動の軌跡をたどります。

(広島県立美術館 主任学芸員 藤崎綾)

【平山郁夫―文化財赤十字への道―】
会場:広島県立美術館(広島市中区上幟町2−22)
会期:4月8日(火)〜6月1日(日)会期中無休
開館時間:9:00〜17:00
※金曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
※4月8日は午前10時から
会場:3階企画展示室
料金:一般1,100(900)円、高・大学生600(400)円、小・中学生400(200)円
※団体は20名以上
※学生券をお求めの際は学生証のご提示をお願いします。
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳及び戦傷病者手帳の所持者と介助者(1名まで)の当日料金は半額です。
※本券で所蔵作品展もご覧いただけます。