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広島文化新人賞受賞者に聞く 〜井田明宏さん

掲載日:2022年3月15日
第2回 広島文化新人賞、まず最初に井田明宏さん(広島市)にお話を伺いました。

◆広島文化新人賞の受賞、おめでとうございます。
 ありがとうございます。大学院修了後、縁もゆかりもない広島の地に飛び込みましたが、様々なご縁に恵まれて、幸いにも充実した活動ができております。日頃からご支援くださるみなさまに厚く感謝申し上げるとともに、受賞に恥じぬよう精進してまいります。

◆高校時代に参加した研修旅行(中国)が書の道に進むきっかけとなったと伺いました。その時のエピソードを聞かせていただけませんか?
 実は、高校時代の私はバドミントン一筋で、書道部ではいわゆる幽霊部員でした。はじめの2年間は特に賞を頂くこともありませんでしたが、高校3年の時に競書大会へ出品した作品が受賞したことにより、研修旅行に参加することとなりました。教科書や書籍で学んだ書の名品、遺跡を実際に目の当たりにし、そのスケールの大きさに衝撃を受けたことを記憶しています。この体験がきっかけとなり、大学受験本番の半年前に進路を変更し、大学で書を学ぶことを選択しました。
 
◆大学でのお仕事の傍ら、一般の方を対象とした書に関するワークショップも行っておられるそうですね。
 昨年は「料紙(りょうし)装飾」のワークショップを行いました。「料紙装飾」は色の異なる紙をつなぎ合わせる「継紙(つぎがみ)」や、金箔銀箔などを使用した「箔装飾」、雲母(うんも)によって模様を紙に摺りだす「雲母摺り(きらずり)」など、様々な技法を用いて紙を装飾するもので、特に仮名と相性の良い料紙を作ることができます。ワークショップではこれらの技法を体験してもらいつつ、短冊サイズの料紙を制作しました。参加の方々の個性が光る料紙が出来上がり、中にはそこに書をしたためる方もいらっしゃいました。 
 
◆今後に向けて、ひと言いただけますか?
 当面は自身の研究課題である、中国・後漢時代(西暦25〜220年)の書体変遷の実像に関する調査、分析等を行い、自らの考えを博士論文としてまとめることを目標としています。また、熊野筆の歴史と技術伝承に関わる調査にも携わっています。書にとってなくてはならない筆が今後も長く存続していけるよう、自身のできることで貢献していきたいと考えています。
 そして、書の面白さを多くの方々に伝えられるよう、自身の見識、技術を常に磨いていきたいと思います。書に終点などありませんが、筆を持てなくなるその日まで楽しく筆と遊びつつ、多くの方々と交流していければ幸いです。


ありがとうございました。
“筆を持てなくなるその日まで筆と遊ぶ…”素敵な表現ですね。益々のご活躍をお祈りいたしております。

今後の出品予定を伺いました。井田さんの作品はこちらでもご覧いただけます。

■安田女子大学文学部書道学科小作品展
日時:2022年3月17日(木)〜29日(火)
会場:熊野町観光案内所「筆の駅」

■第73回 毎日書道展中国展
日時:2022年8月23日(火)〜28日(日) 
会場:広島県立美術館 県民ギャラリー(予定) 

井田明宏さん


尾崎放哉の句(2018年 第71回毎日書道展 毎日賞)


料紙装飾ワークショップの様子(2020年)