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広島文化新人賞受賞者に聞く 〜諫山元貴さん

掲載日:2022年4月1日
第2回 広島文化新人賞、お二人目は諫山元貴さん(広島市)です。

◆広島文化新人賞の受賞、おめでとうございます。
 ありがとうございます。これまでの活動を支えてくださった方々に心より感謝申し上げます。そしてこれからも受賞に恥じぬよう精進していきたいと思います。またスタジオピンクハウスで若い作家や学生とのコミュニケーションをとれるようなプログラムを企画していけたらと思います。

◆代表作である映像作品(Orderシリーズなど)は陶芸の技法を利用するなど唯一無二の手法を用いた映像となっていると伺いました。その手法が生み出されたキッカケやその作品を鑑賞する上でのポイントなど、教えていただけますか?
 映像作品の作り方は基本的に一緒です。まず既製品の型を取り、その型で白い土(ポーセリン)を使って複製物を作ります。例えば《Order》は塩ビパイプ、また《Objects》はお土産品などの置物を型取っています。そしてそれを水の中に入れて、崩れていく様を撮影したものがこれらの映像となっています。崩れていく時間は編集しておらず、そのままの時間になります。つまり、CGでもありませんし、過度な演出もしていません。
 上記の作品シリーズが生まれたきっかけとしては、私が大学生の時に千利休のお茶のことを調べていたことがその一つにあります。お茶会は、客として招かれた者が社会的な身分をなくした上で行うセレモニーであり、それに関心を持った私は、色々な本を読む中で老子と出会い「根源に帰ることが安息なり」という考えに辿り着きました。そこから、人工物が自然に還ることを見ること、すなわちあるシステムで作られた個体が、元の全体に還って行く流れを思いつきました。
 この作品を鑑賞する上でのポイントですが、主観的な時間軸や社会的に機能している時間軸とは別の異なる時間軸を感じてもらいたいです。そして、その時間軸があることを頭の片隅に置きながら日常に戻っていくことで、相対的に世界を感じてもらえたらと思います。
 
◆環境の一つとして映像作品が置かれるための開拓にも取り組んでおられるそうですね。
 2018年頃から、ホテルやオフィス、ショーウィンドウなど、美術館ではない場所での映像作品展示を積極的に行ってきました。それは様々な時間が流れる都市の中で別の時間軸、本来万人に与えられているはずの一定速度・一定方向に流れる物理的な時間へとアクセスし、そしてまた主観的な時間を感じる日常に戻っていくという循環をつくれないかと考えたからです。今後もこの取り組みを継続して行っていきたいです。 
 
◆今後に向けて、ひと言いただけますか?
 作品制作はもちろん継続するとして、5月からスタジオピンクハウスで美術に関心がある大学生と学芸員の方々との共同プログラムを予定しています。

ありがとうございました。益々のご活躍をお祈りいたしております。

現在、参加しておられる展示会はこちらです!

Each Day Begins with the Sun Rising
Four Artists from Hiroshima
日時:2022年2月12日〜6月25日
会場:Benton Museum of Art at Pomona College(アメリカ カリフォルニア州) 

諌山元貴さん


detail from Objects Series


BankART KAIKO(神奈川県横浜市)での展示