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広島文化賞受賞者に聞く 〜南 昌伸さん

掲載日:2023年3月15日
第43回広島文化賞を受賞された南昌伸さん(広島市)にお話しを伺いました。

◆広島文化賞の受賞おめでとうございます。
ありがとうございます。
多くの方がご活躍されているなか、思わぬ受賞に大変恐縮しております。
今後も手を休めることなく、素材に拘り、金属工芸、金属造形の創作に励みたいと思います。

◆鍛金作家になられたきっかけをお聞かせください。
私が、大学の工芸科に入学して間もない頃だったと思います。ある鍛金作家の展覧会を見に行った時の、作品との出会いがきっかけだったと思います。
子供の頃、何故か金属に惹かれ、机の引き出しを開けると、金属製の部品がゴロゴロしていたのを思い出します。その展覧会で感じた金属独特の素材感は、子供の頃に惹かれていた金属の不思議な魅力そのものだったのだと思います。その出会いで、私も金属を使って作品を制作したいと思いました。

◆鍛金による工芸美術作家として高く評価されていらっしゃいます。
独自の創造的芸術表現を追求される際に、どのような点に苦心されていらっしゃいますか?

鍛金とは、金属を叩いて延ばす、広げるなど金属の塑性を利用して成形する技術のことです。
私は、銅、真鍮、ステンレススチール、鉄などの金属素材をよく使いますが、ステンレススチールを使った作品は、叩くことなく制作したりもします。私は、鍛金といった技術への拘りよりも、金属素材の個性(特性)への拘りの方が強いと思います。
金属素材は、それぞれ独自の特性を持ち合わせています。私は、その特性をかたちにおこしながら、それらを魅力的に視覚化したいと思っています。私が創作を展開していく上で必要と感じるのは、常に新鮮な視点で素材と対峙し、素材が持つ視覚化可能な特性を見逃さないために、自身の感度を常に高く持ち続けるということです。しかしながら、意識していてもなかなか思うようにいかないのが現実です。

◆長年にわたって、広島市立大学等で後進の指導にもあたってこられましたが、工芸美術作家を志す方にメッセージをいただけますか?
工芸美術作家を志す人は、手を動かすことが好きな人ばかりだと思います。手を休めることなく創作に没頭し、ますます手を動かすことが好きになってください。常に好奇心を持ち、全ての感覚を研ぎ澄まして素材と向き合っていると、必ず、見えていなかったものが、心惹かれるものが見えてくるはずです。
人の仕事を奪いつつあるAIの時代を迎えていますが、AIは、工芸作家の仕事を奪うことができるでしょうか。先人の偉業に学び、テクノロジーに学ぶことも怠ることなく、独自の世界を探求していってください。

ありがとうございました。
今後の作品展の予定を伺いましたのでご紹介します。


■グループ展「瓢箪からGIFT展」
2023年3月25日〜4月2日  
場所 瓢箪堂(広島市安佐南区長楽寺3丁目3−43)

■鍛金4人展
2023年4月16日〜22日 
場所 のばなArt Work in GINZA(東京都中央区銀座2−4−1 銀楽ビル2階)

■第61回日本現代工芸美術展
2023年4月19日〜24日
場所 東京都美術館(東京都台東区上野公園8−36)

■2人展
2023年10月7日〜15日   
場所 GALLERY HEPTAGON(京都市上京区下立売通智恵光院西入中村町523)

南 昌伸さん


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