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広島県立美術館「シャガール展」

掲載日:2013年11月1日
 マルク・シャガールはロシア(現在のベラルーシ)、ヴェテブスクのユダヤ人家庭に生まれました。サンクト・ペテルブルクの美術学校に学んだ後、24歳でフランスのパリに出て活躍を始め、アーキペンコ、モディリアーニ、アポリネールなど多くの芸術家や文学者と出会います。ベルリンでの個展の帰途、故郷を訪れた頃に第一次世界大戦が勃発、ロシアに留まり、その後パリに戻ります。反ユダヤの風潮が勃興する時代、1933年にはナチスによりマンハイムで作品が焼却され、翌年にはドイツ国内の美術館が所蔵しているシャガール全作品を撤去され、一家でニューヨークへ亡命しました。戦後フランスに戻り、油彩や版画だけでなく、天井画や壁画、ステンドグラスや陶芸など幅広く活動し、97歳で亡くなるまで旺盛な制作意欲によって数々の作品を遺しました。
 この展覧会は3章で構成されています。ここではエッセンスを少しだけご紹介しましょう。
 
 第1章 祝祭の空間−色彩の交響では、パリ・オペラ座の天井画を中心に舞台美術や大道芸をテーマにした作品を展示します。パリ・オペラ座は、1875年にシャルル・ガルニエ設計案が採択され建設された絢爛豪華な建築物。当初のオペラ座の天井はジュール=ウジェーヌ・ルヌヴの天井画《ムーサたち、昼と夜》が飾られていました。第二次世界大戦後、この天井画をシャガール作品によってリニューアルする計画が持ち上がりました。文化大臣アンドレ・マルローが依頼したこの計画に対し、国を代表するオペラハウスの装飾を外国人にさせることが議論を呼びました。この時、画家76歳。
 シャガールは20歳台から、舞台美術やバレエ衣装などに取り組んできました。天井画の制作にあたっては、構想に1年超をかけ、多くの習作や下絵が描かれました。初期段階の習作では、色紙や印刷物を自由に切り貼りした大胆な造形が見られ、天井画全体の配色や構図のバランスを検討したことがわかります。次に、テーマに関する習作では、個々の情景とそれらが織り成す全体の構図や配色が検討されました。その後、実物の10分の1サイズの下絵2点が描かれ、当時のフランス大統領シャルル・ド・ゴールがひとつを選び、現在の構成に決定したと伝えられます。天井画には14のテーマが描かれています。
 
 第2章 精神の光−祈りの造形では宗教的テーマに基づいた作品を、第3章 南仏での安息−晩年の境地では、南仏で安住の地に辿りついた画家が、陶芸やタピスリーにも手を拡げ、素材や技法は異なってもシャガールの世界を具現していった様子をご覧いただきます。
 ぜひ、あなたの知らないシャガールに会いに来てください。
(広島県立美術館主任学芸員 福田浩子)

※トップページ写真、1枚目の写真
「シャガール展」会場イメージ(札幌会場)
© ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo 2013, ChagallⓇ B0170
※2枚目の写真
パリ・オペラ座天井画を制作中のシャガール パリのゴブラン織工場にて 1964年(撮影:イジス)
©IZIS Bidermanas By courtesy of the Comité Marc Chagall

シャガール展
■期間 2013年11月3日(日・祝)〜12月25日(水)
■開演時間 9:00〜17:00(金曜日は19:00まで)入場は閉館の30分前まで ※11月3日は10:00開館 会期中無休
■場所 広島県立美術館(広島市中区上幟町2−22)
■入館料 1300円( 1000円)、高・大学生 900円 (700円)、小・中学生 700円(500円)
※( )内は前売・20名以上の団体料金
■問合せ先 広島県立美術館 082-221-6246
■関連イベントはこちら→広島県立美術館「シャガール展」関連イベント

「シャガール展」会場イメージ(札幌会場)


パリ・オペラ座天井画を制作中のシャガール パリのゴブラン織工場にて 1964年(撮影:イジス)