あら不思議!彼女が布を前にハサミと糊をとりだせば、そこには魔法のようにきれいな色と形が生まれます。彼女の名は、藤田桜。布を絵の具のように使いこなす布貼り絵作家です。
藤田は、大妻女子専門学校(現・大妻女子大学)卒業後の1946年、中原淳一にそのセンスのよさを認められて雑誌『ひまわり』の創刊に編集部員として迎えられ、ここで次第に手芸作家としての才能を開花させます。この頃、猪熊弦一郎らの田園調布純粋美術研究所で本格的に絵画の勉強にも取り組み始めました。そして手芸作家としての布の知識に加え、画家としての表現力を身に着けていったことにより、布貼り絵という新しい絵画表現を見出したのでした。
藤田は、1952年、月刊保育絵本『よいこのくに』(学習研究社)の表紙絵の専属作家となるなど布貼り絵作家として活躍し始めます。この『よいこのくに』を懐かしく思われる方も多いでしょう。その後1963年、夫の画家、高橋秀と共にイタリアに渡り、以後40年余り、日本から離れローマで暮らします。
本展においては、イタリアで制作された『ぴのっきお』(1971年)をはじめとする、8冊分の絵本の布貼り絵の原画と参考出品として『つきよのおんがくかい』(1978年)、『おつきさま』(1980年)の複製原画を展示いたします。さらに布地コラージュ作品もあわせて、約160点の作品により構成されています。布の色、柄、織りを巧みに駆使したこれらの原画は間近で見れば見るほどに、その力強さが伝わります。
藤田桜の世界を是非お楽しみください。
(ふくやま美術館 学芸課次長 宮内ちづる)
※トップページ・1枚目の写真:ぴのっきお(1971年)岡山県立図書館所蔵
2枚目の写真:とりのともだち(1974年)黒住教宝物館所蔵
3枚目の写真:みずうみはなぜこおる(1972年)岡山県立図書館所蔵
©Sakura Fujita
「藤田桜−『ぴのっきお』からの布貼り絵−」
■会期/7月12日(土)〜9月15日(月祝)9:30〜17:00
(9月5日(金)、6日(土)、12日(金)、13日(土)は19:00まで)
■休館日/月曜日(7月21日・8月11日は開館、7月22日は休館)
■会場/ふくやま美術館(福山市西町2丁目4-3)
■入館料/一般1000円(800円) 高校生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金
■問い合わせ先/ふくやま美術館 084-932-2345 |
ぴのっきお(1971年)岡山県立図書館所蔵
とりのともだち(1974年)黒住教宝物館所蔵
みずうみはなぜこおる(1972年)岡山県立図書館所蔵
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