徳川美術館は、徳川家康の九男・徳川義直から始まる御三家筆頭・尾張徳川家に伝えられたいわゆる大名道具を展示公開している美術館です。徳川家康の遺品を中核に、歴代藩主や夫人たちの蒐集品、婚礼の際の持参品、さらに他の大大名家から売り立てられた重宝類や篤志家からの寄贈品も加えた充実した収蔵品を誇っています。
このたびの展覧会では、ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)の開館25周年の記念特別展として、尾張徳川家ゆかりの茶道具及び香道具の逸品を展示し、我が国伝統文化を代表する茶と香の世界を紹介します。
室町時代に成立した茶の湯は、江戸時代になると大名家にとって、武家の格式を示す重要な行事や、私的に諸大名を招いての接待に欠かせないものとなりました。尾張徳川家には、その多様な茶の湯の目的に応じて用いられる、「大名物」、「名物」を始めとする茶碗・茶入、掛物などの茶道具が伝来しています。
写真1の純金台子皆具(じゅんきんだいすかいぐ)は、尾張徳川家二代徳川光友に嫁いだ、三代将軍徳川家光の長女千代姫(1637〜98)の婚礼道具の一つとみられ、重要文化財に指定されています。「台子」は茶の湯で使う四本柱の棚のことで、純金製の茶道具が一式揃っていることから、この名称で呼ばれています。
写真2の大名物 唐草文染付茶碗 銘 荒木(だいめいぶつ からくさもんそめつけちゃわん めい あらき)は、中国・明時代16世紀のもので、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」にも登場した武将で、織田信長に反旗を翻した後に逃亡した、荒木村重が所有していたものです。この茶碗は、村重から茶道の師である千利休の手に渡り、後に徳川家康から尾張徳川家へと伝来しました。大名物は、千利休以前、とくに足利義政を中心とする東山文化の時代に名を得た名物茶器です。
古代から貴族が香りを楽しんでいた香は、室町時代に座敷が形成されるとその飾り道具として、あるいは江戸時代には大名婚礼調度の一つとして、重要な要素となりました。尾張徳川家には、座敷飾りや婚礼調度などの香道具が伝来しています。
写真3の初音蒔絵旅香具箱(はつねまきえたびこうぐばこ)は、国宝に指定されている「初音の調度(ちょうど)」と呼ばれる、千代姫が輿入れした際に持参した蒔絵調度の一つです。初音の調度は『源氏物語』の「初音」の帖の和歌の内容を蒔絵のデザインに取り入れ、歌の文字の一部をデザインの中に配しています。香道具を収める旅用の香具箱で、旅行用のためか、香道具は通常よりやや小振りの寸法で揃えられています。
尾張徳川家に伝来する122点の茶道具・香道具を紹介する特別展「尾張徳川家の名宝―華麗なる茶と香の世界―」は、会期中、毎日開館しています。
(ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)主任学芸員 西村直城)
■期間 平成26年10月17日(金)〜11月30日(日) 9:00〜17:00(入館は16:30まで)
■場所 ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)(福山市西町2-4-1)
■入館料 一般1000円(800円)、高校生・大学生700円(500円)、小学生・中学生400円(300円)
*( )内は前売特別入館券と20名以上の団体
*前売特別入館券は、プレイガイドなどで発売中
■問合せ先 ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館) 084-931-2513
■関連行事はこちら→開館25周年記念 特別展「尾張徳川家の名宝―優美なる茶と香の世界」―関連行事 |
写真1:重要文化財 純金台子皆具(じゅんきんだいすかいぐ)
写真2:大名物 唐草染付茶碗 銘 荒木(だいめいぶつ からくさもんそめつけちゃわん めい あらき)
写真3:国宝 初音蒔絵旅香具箱(はつねまきえたびこうぐばこ)
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