“日本遺産” 尾道の「国宝の寺 浄土寺」の寺宝が一堂に会するはじめての展示会
浄土寺(じょうどじ)は境内全域が国宝に、伽藍(がらん)の多くが国宝や重要文化財に指定された「国宝の寺」で、“日本遺産” 尾道(尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市)の中核をなす古刹です。
また、浄土寺にはその歴史と信仰の広がりを裏付けるかのように、多くの貴重な文化財が守り伝えられてきました。そこには、仏教美術の精華に加え、動乱の時代・中世の「後醍醐天皇」や「足利尊氏」に関わるもの、「港町・尾道」が最も栄えた近世の豪商をはじめとする人々の信仰が伺えるものなどがあります。
今回の展示会は、こうした浄土寺に伝わる貴重な寺宝の数々を紹介し、豊かな瀬戸内を背景に華ひらいた仏教文化の粋を御覧いただきます。
はじめに
中国地方屈指の古刹である浄土寺は、飛鳥時代、推古天皇24年(616年)に聖徳太子によって開創されたと伝えられます。鎌倉時代後期にあたる14世紀初頭には、南都西大寺の定証上人(じょうしょうしょうにん)が瀬戸内屈指の良港であった尾道の商人たちの要請と援助を受けて伽藍を整備しました。その後、これらの伽藍は大火によって焼失しましたが、まもなく港町の富豪によって多宝塔・本堂(いずれも国宝)などが再建されました。そして、江戸時代には尾道の豪商たちによって堂舎が寄進され、現在の姿に整えられていきました。
浄土寺は瀬戸内有数の水運の要地である尾道にあり、また西大寺流律宗(さいだいじりゅうりっしゅう)の拠点の一つでもあったことから、中世には公家や武家の双方から庇護を受けました。特に、後醍醐天皇との戦いに敗れた後、当寺に戦勝を祈願して形勢を挽回した足利尊氏をはじめとする室町将軍家足利氏との結びつきは強く、足利義詮(あしかがよしあきら)や高師直(こうのもろなお)などの室町幕府の有力者とのつながりを物語る資料が多く伝えられています。
また、長い歴史を持つ浄土寺には、瀬戸内地方屈指の古刹にふさわしい仏像や仏教絵画など数々の仏教美術作品が遺されています。さらに、尾道は江戸時代に北前船の寄港地として栄え、豪商たちを中心とした町人文化が花開いた町でもあり、浄土寺には彼らによって育まれた文化を物語る古典や作動関係の文化財も多く伝えられています。
今回の展示会では、昨年9月に方丈・庫裏及び客殿などを対象とする“平成の大修理”が完了したことを記念し、瀬戸内の精華と題してこうした歴史や特徴を持つ古刹浄土寺の文化財を紹介するとともに、それを支え発展させてきた港町尾道などについても御紹介します。
展示内容
1 浄土寺の歴史
開創から再興、近世までを紹介
・重要文化財 紙本墨書定証起請文(鎌倉時代)他
2 浄土寺を彩る人々
歴史上の人物とのつながりをとおし、歴史の転換点に関わった浄土寺を紹介
・重要文化財 足利尊氏寄進状(室町時代)
・広島県重要文化財 後醍醐天皇綸旨(室町時代)他
3 祈りの美とかたち
仏像や曼荼羅図など、密教美術の精華を紹介
・重要文化財 絹本著色仏涅槃図(鎌倉時代)
・重要文化財 木造聖徳太子立像(開山堂安置)(鎌倉時代)
・尾道市重要文化財 源氏物語扇面張屏風(室町時代)他
4 浄土寺と尾道
屏風絵や茶道具などを中心に、港町・尾道における浄土寺を紹介
・広島県重要文化財 銅製鰐口(室町時代)他
(みよし風土記の丘ミュージアム(広島県立歴史民俗資料館)学芸課長 田邊英男)
「尾道・浄土寺の寺寶展―瀬戸内の精華―」浄土寺「平成の大修理」完成記念・平成27年度秋の特別企画巡回展
【会期】10月9日(金)〜11月23日(月・祝)
【会場】みよし風土記の丘ミュージアム(広島県立歴史民俗資料館)(三次市小田幸町122)
【時間】9:00〜17:00(入館は16:30まで)
【休館日】月曜日(ただし、10月12日・11月23日は開館)
【料金】一般500円(400円)、高・大学生380円(300円)、小・中学生250円(200円)
*( )内は20名以上の団体料金
【問い合わせ先】
みよし風土記の丘ミュージアム(広島県立歴史民俗資料館)0824-66-2881 |
浄土寺所蔵茶道具類
青蓮院宮尊道法親王書写光明真言会願文
木造文殊菩薩騎獅像
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