団体の部受賞の、比婆荒神神楽保存会(庄原市)です。代表の横山邦和さんにお話を伺いました。
◆広島文化賞の受賞 おめでとうございます。
広島文化賞を賜り、厚く御礼申し上げます。伝統文化芸能等の保存継承は極めて難しく、特に農山村では大変厳しい状況にあります。そのような中、このたびの受賞により大きな力を与えていただき、保存会をはじめ地域の皆様にも大変喜んでいただいております。これを糧に保存継承はもとより、広く公演活動にも努力していきたいと思っております。
◆神楽の保存・継承を通して味合われた喜びやご苦労、そして伝えたい想いがあればお聞かせください。
比婆荒神神楽が、国の重要無形民俗文化財の指定を受けたのは昭和54年です。この時点に記録保存されていた古文書は400年前のものですが、それらから推測すると、それ以前から、しかも古式を守り一度も絶えることなく継承されてきたということは大変貴重であるとの評価を受けております。
私の家は代々神楽を継承しており、幼少の頃は父や祖父の顔を見るのは正月三が日くらいというほど神楽が盛んに行われていましたが、昭和40年代に入ると社会は大きく変わり、農家の長男までもが都会都市部へと流出していくようになり、公演の回数も減っていきました。
それでも、編纂1300年を経過した古事記等と照合し、歴史を学び、神楽に触れていくと、現代の私たちが忘れかけた“神々と共に在る暮らしの根源”や“日本人の魂”とも言える部分の大切さに気付かされます。保存会ではそれが未来を掴むことにつながると信じて保存継承に努め、また、家族や地域社会との繋がりが希薄化している昨今、神楽という伝統文化を通じて人づくり地域づくりに微力を傾けていきたいと思っています。
◆「比婆荒神神楽」は「ひろしま神楽」のうち、演劇色の濃いものとは異なる“神事”としての芸能だそうですが、観賞する上でのポイントがあれば教えてください。
神に奉納するものという基本に立って演じることが大きく他にはないものと言えます。また、弊(へい・・・幣束の敬称)をはじめ和紙の切り細工も多く、それぞれ意味を持っています。
また、広島県内の他の神楽は楽(がく)の太鼓が一本調子で単調である一方、比婆荒神神楽は唄いを入れながら、サンヤ拍子(・・・神事舞や祝詞神事等に使う、ゆったりとした調子)、御神楽(みかぐら)調子(・・・神事舞や祝詞神事等の最後のテンポの速い舞い上げ等に使う調子)、命(みこと)太鼓(・・・能舞で厳かにゆっくり、ゆるやかなテンポの太鼓の調子)等々を調べの基本とし、組合せて奏することが多いです。 これらをポイントとして観ていただきたいと思います。
◆現在取り組んでおられることや今後に向けて等、ひと言いただけますか?
保存会も高齢化が進み、古式の伝承が困難な時を迎えていますが、文化財の価値を鑑み昔の形を変えることなく正しく後世に残すことが重要であると認識し、後継者の育成に専念しています。その一環として開催した子ども神楽教室や、続いて誕生した女性グループ等の指導も行っています。
◆公演や奉納のご予定はありますか?
夏以降に公演を予定しており、小規模な神楽や子ども神楽もあります。また、千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館では、比婆荒神神楽について、常時展示がされています。是非お出掛けください。
ありがとうございました。
今年の主な公演・奉納予定は次のとおりです。
8月13日(土) 広島県民文化センター (広島市中区大手町1-5-3)
10月1日(土) 獅子山八幡宮 (岡山県新見市哲西町矢田2368番)
10月2日(日) 帝釈峡スコラ高原 (広島県神石郡神石高原町相渡2167)
11月3日(木・祝) 大山寺開山1300年記念神楽 (鳥取県西伯郡大山町大山9)
11月19日(土) 奴可(ぬか)神社 (広島県庄原市東城町小奴可(こぬか)1195)
11月26日(土) 東城町塩原(しおはら)集会所 (広島県庄原市東城町塩原)
※全ての問合せ先:08477-2-0661 田森自治振興センター
8月13日の公演については、ひろしま文化振興財団のホームページでもお知らせしますので、皆さんお楽しみに!! |
横山邦和さん(団体の部、伝統・民俗芸能)
七座神事(猿田彦の舞)
能舞(国譲り・オオクニヌシ)
|