広島県立歴史博物館（福山市） 開館20周年 企画展「神・人・財(たから)―広島県の神社の至宝―」
掲載日：2009年6月1日
１ 開催中の企画展案内
広島県立歴史博物館では、今年、開館20周年を迎えるのを記念して、広島県神社庁と共催で企画展「神・人・財(たから)―広島県の神社の至宝―」を開催しています。広島県内の神社に関係する国・県・市町の指定文化財など、普段の参詣では見られないものが一堂に会した県内では初めての展示で、6章で構成しています。
第1章の「信仰の形」では、原始時代から神々への信仰の源流となる祭祀が行われていたことを紹介し、神社の社額や神輿など信仰が形となったものを展示しています。特に、広島市東区の東照宮の神輿は、五十貫みこしとも称され、江戸時代前期に作られた八角形のとても壮麗なものです。
第2章の「神々に仕える彫刻」では、馬・獅子頭・狛犬など神社と関係の深い彫刻を展示しています。その中でも御調八幡宮(三原市)の獅子頭は、平安時代末期の作という遺例がほとんどない時代のものです。県内全域から平安時代〜江戸時代の狛犬が集まっており、それぞれの個性をお楽しみいただけます。
第3章の「神と仏」は、平安時代初期から江戸時代の終わりまでの千年間もの間、日本人があたりまえに信仰してきた、神と仏を同一視した「神仏習合」を紹介します。明治政府の「神仏分離令」によって廃れた「神仏習合」ですが、現在でもその名残がみられる神社もあります。広島県重要文化財である烏須井八幡神社(尾道市)の大般若経は平安時代末期のものですが、このように大般若経が神社に残っている例は、多くあります。
第4章の「奉納品と祈り」は、武具・文雅・響き・銘文に分けて、多種多様な奉納品を紹介しています。その中でも厳島神社(廿日市市)の文化財が、圧倒的な量を誇ります。今回展示している国宝の檜扇は平安時代末期のもので、公達の野遊びを細密に描いたものです。
第5章の「絵馬の祈り」は、現代でも私たちが神社で願い事をする時に欠かせない絵馬を通して、人々がどのような祈りを込めていたのかを紹介します。庄原市の日吉神社の「敬老図」・「雨乞祈祷図」は、江戸時代後期の三次地方の代官で、民政に心を砕いた頼杏坪（頼山陽の叔父）が催した行事を描いたもので、当時の人々の姿を知ることができます。
第6章の「伊勢神宮の神宝」は、20年毎の式年遷宮の際に神殿とともに新調される、伊勢神宮の神宝を紹介しています。
また、関連行事として、6月6日(土)14時からは広島県神社庁庁長・吉備津神社宮司の追林昌弘氏による講演と吉備津神社雅楽部の演奏、最終日の6月14日(日)13時からは担当学芸員による展示解説を予定しています。
２ 博物館の主な活動
当博物館は平成元(1989)年11月3日文化の日に開館しました。
福山市を流れる芦田川の河口近くにあった鎌倉〜室町時代の港町である草戸千軒町遺跡の出土品（重要文化財）を中心に、広島県をはじめとする瀬戸内海の流通と民衆生活について常設展示する博物館です。
特に実物大で復原された草戸千軒の町並みは、その時代にタイムスリップしたようだと好評を博しています。この展示の一角には、月毎に展示替えを行い収蔵品を紹介するスポット展示コーナーがあります。
また、企画展示室では、各年度に3〜4回の企画展・部門展、2年に1回程度の特別展を開催しています。これらの展示の中で、平成元年の「藤木古墳展」、10年の「冷泉家の至宝展」、20年の「徳川家・姫君の華麗なる世界」などは特に好評を博しました。
この他の行事としては、展示会に関連した記念講演会、展示解説会、ワークショップ、年度ごとにテーマを決めて連続講座を行う博物館大学、小・中・高校生を対象としたこども博物館教室があります。会員制の学習会としては、古文書学習会と考古学学習会を実施しています。
博物館では、展示や関連行事などの他に、地域の歴史資料の調査研究、膨大な収蔵品の保存管理という重要な業務があります。現在は主に、草戸千軒町遺跡出土品の調査研究と保存修理、草戸千軒町遺跡周辺の芦田川下流域の中世をめぐる総合研究、神辺の儒学者・菅茶山に関係する資料の整理を行っています。
これら博物館活動は、地域の人たちによる「博物館友の会」と「けんぱくボランティア」の支援をいただいています。「けんぱくボランティア」は解説、図書、古文書、考古、備後絣、鉄道、ワークショップからなり、現在の登録者数は108人です。これだけ多岐にわたって博物館収蔵資料の整理をするボランティアは、他館ではあまりみられません。
３ 今後の展示と催し
当博物館では、開館20周年を迎える今年11月3日に向けて、さまざまな展示・行事を予定しています。
7月24日(金)〜9月6日(日)は、夏休みの展示「こども博物館大集合」と題して、会期中の毎週日曜日に開催される博物館教室に関連する展示を行います。
10月16日(金)〜11月23日(月･祝日)は、企画展「平家一門の栄華と瀬戸内海―海原をかけぬけた清盛の夢」を開催します。
また今年度は、比治山大学（広島市東区)・広島県立歴史民俗資料館（三次市）と共催の公開講座「瀬戸内海と中国山地の歴史と文化」を開催します。この6月には、当館で2回、比治山大学で6回開催します。
当博物館は今後も歴史・文化情報の発信と、歴史資料の調査研究・保存収集を進めてまいります。
是非、ご来館下さい。
(広島県立歴史博物館 主任学芸員 西村直城）
*広島県立歴史博物館の詳しい情報は、下記でご覧いただけます。
広島県立歴史博物館ホームページ
◆追記◆
５月下旬の水曜日、活動中の「図書ボランティア」の皆さんをお訪ねしました。毎週１回博物館に集まり、寄贈される図書の整理やポスター・チラシの掲示、歴史や文化財に関する新聞記事をスクラップして図書室へ展示するなど、来館者への情報提供が主な活動です。
一方博物館は、ボランティアが単に博物館事業へ参加協力するだけでなく、知識向上が図れるよう、学芸員の解説やイベントへの参加、研修旅行、ボランティア活動の展示などを行っています。
ボランティアは来館者と博物館、地域と博物館を結ぶ掛け橋となり、博物館が地域に根ざしていることが分かりました。
＊福山分室にブックリサイクルコーナーを設置！
もう読むことがなくなって、本棚で眠っている文化芸術関係の図書等のご寄贈をお願いしています。
これまでにご寄贈いただいたのは、
○ 図書 累計６５冊
「日本の美と伝統」徳川美術館コレクション、
「フェルメールとその時代」日蘭交流400周年記念特別展、
「日本画作品集」、その他
○ ビデオテープ 累計６シリーズ 全６７巻
哲学の道に沿って、京都、日本の庭、その他
是非ご覧ください。 |
博物館外観
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重要文化財 木造狛犬 （吉備津神社蔵）
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