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ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)開館30周年記念「世界が絶賛した浮世絵師『北斎』―師と弟子たち―」

掲載日:2019年7月1日
 日本のシンボルとされる富士山を、浮世絵独特の表現で描いた葛飾北斎(1760‐1849)。傑作「冨嶽三十六景」シリーズは、日本人ならば誰もが必ず目にしたことがあるでしょう。このシリーズの中でも特に人気の高いのが、通称「浪冨士」と「赤富士」の二作品です。その強烈なインパクトによって、一度見たら忘れられなくなるでしょう。
 
 浪冨士は、小さく見える冨士の手前に、圧倒的な大きさで立ち上がる波が描かれます。大波が、まさに和舟に襲い掛かろうとする瞬間を、劇的に切り取っているのです。鋭角的に造形された大波の波頭が、獲物に掴(つか)み掛かる「鷹の爪」を連想させて、一層緊張感と不安感を煽(あお)ります。
 一方、「浪冨士」とは対照的な「赤富士」では、鰯雲たなびくすがすがしい快晴のなか、夏の日差しが富士の赤い山肌を照らします。青空に映えるなだらかな稜線が、雄大でゆるぎない安定感を感じさせるでしょう。 
 
 葛飾北斎は、広重・歌麿・写楽などと並び称される、江戸時代後期に活躍した浮世絵の巨匠です。九十歳の長命であった北斎は、七十年間をひたすら画業に費やしました。膨大な数の作品を描き、多くの傑作を残しました。大胆な構図と巧みな線、北斎色ともいえる象徴的な色遣いによる独創的な画風が、一世を風靡したのです。
 
 北斎の魅力は日本のみならず、世界にまで伝わり、近年、海外で北斎作品が展示される機会が増えています。北斎ブームは最近のもののように思われがちですが、海外で北斎が熱狂的に支持されるようになったのは、実は19世紀後半にまで遡ることができます。「ジャポニスム」とよばれる文化現象において、北斎作品が西洋画家たちに大きな影響を与えたのです。印象派のモネやゴッホ、セザンヌなどの巨匠を含む多くの作家たちが、浮世絵の表現方法を、巧みに自らの作品に取り入れたのでした。北斎の代表作「北斎漫画」や「冨嶽三十六景」から着想を得た西洋の作品があるのです。
 
 本展では、葛飾北斎の代表作「冨嶽三十六景」はもちろん、貴重な肉筆画、「忠臣蔵」「東海道五十三次」などのシリーズもの、役者絵、妖怪絵、西洋の銅版画に感銘を受けて描いた西洋画などの作品を通して、多様なジャンルを描き分けた北斎芸術の全貌を紹介します。
 また、北斎に影響を受けたといわれる、弟子やフランス人画家の作品も紹介し、北斎芸術を様々な角度から検証し、葛飾北斎の人気の秘密に迫ります。北斎が描き込んだ細やかな描写から、江戸時代の歴史や文化も垣間見ていただければ幸いです。
(ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)主任学芸員 石橋健太郎)

「世界が絶賛した浮世絵師『北斎』―師と弟子たち―」 夏の企画展 開館30周年記念
【会期】令和元年7月5日(金)〜9月8日(日)
【会場】ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)(福山市西町2-4-1)
【開館時間】9:00〜17:00(入館は16:30まで)
【休館日】月曜日(7月15日及び8月12日を除く)、7月16日(火)
【入館料】一般1000円(800円) 大学生800円(640円) 高校生520円(410円) 小・中学生350円(280円)
※( )内は20名以上の団体
【問い合わせ先】ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)084-931-2513

葛飾北斎 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏 (世界中の人に知られている日本のアイコン)


葛飾北斎 冨嶽三十六景 凱風快晴 (2番人気を誇る通称「赤冨士」)


葛飾北斎 百物語 お岩さん (どこかユーモラスで怖くない!)