「博物館」という施設は、展示を行うだけでなく、資料の収集・保管、調査研究、学習支援など様々な活動を行っています。しかし、日頃、博物館の中でどのような仕事を行っているのかが見えづらく、あまり知られていないのが現状です。
今回の展示は、県立歴史博物館で行っている『仕事』について、「収集」「保管」「調査研究」「展示」「学習支援」の5つに分けて紹介することで、博物館に対する興味・関心を高め、理解を深めていただくことを目的に開催します。
ここでは、当館が行っている『仕事』の中から「学習支援」についてご紹介します。
当館では、小学生・中学生を対象とした「夏休みだよ!こども博物館教室」という体験学習を実施しており、その中には、畳を作るのに使われる「い草」に関連した「い草を織ろう」などの体験を3つ用意しています。当館のある備後南部地域は、かつて日本を代表する畳表である「備後表」の生産地でした。江戸時代には、既にこの地域で生産された畳表が高級品としての地位を確立していました。しかし、人々の生活様式が変化する中で、畳の使用が少なくなり、畳表の生産も減少しています。このような歴史を踏まえ、こども博物館教室は、畳表を織る体験学習を通して、備後南部の伝統的地場産業の一つである「備後表」が生活や文化に果たしてきた役割について考えてもらうために行っています。
写真1は、「い草を織ろう」で使用するミニ織機です。これは、国内唯一の「手織中継表(ておりなかつぎおもて)製作」の選定保存技術保持者に選定された来山淳平さんにより製作された、手作りの織機です。来山さんは、江戸時代に制作された「殖藺図巻(しょくいずかん)」などの絵図や文書を参考にして、江戸時代の織機を復原しました。「い草を織ろう」で使用するミニ織機は、その復原品を小学生などでも扱いやすいように二分の一サイズにしたものです。
写真2は、「い草を織ろう」の前日にミニ織機に糸掛けをしている様子です。約2日かけて20機のミニ織機に糸掛けをしていきます。この他にも、い草を織るために必要な道具類を用意したりなど、合計3日は準備に要します。参加される皆さんは、糸が掛けられている状態で体験されますが、その裏では職員が様々な準備をしています。
写真3は、実際に子どもたちが体験している様子です。い草一本一本が細いため、なかなか出来上がりに時間が掛かりますが、出来上がった時の達成感はとても大きいものがあります。
今回の展示では、普段は見ることができない裏側も含め、博物館の『仕事』を紹介しますので、是非、ご覧ください。
(ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)学芸員 山川聡大)
令和5年度早春の展示「博物館のおしごと展」
【会期】1月19日(金)〜3月20日(水・祝)
【会場】ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)(福山市西町二丁目4-1)
【開館時間】9:00-17:00(入館は16:30まで)
【休館日】月曜日(ただし2月12日は開館)、2月6日(火)〜2月9日(金)、2月13日(火)
【入館料】一般290円(220円)、大学生210円(160円)、高校生及び満65歳以上無料
※()内は20名以上の団体料金
【お問い合わせ先】
ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)084−931−2513 |
写真1 「い草を織ろう」で使用するミニ織機
写真2 「い草を織ろう」の準備状況(糸掛けの様子)
写真3 「い草を織ろう」の体験の様子
|