NHK大河ドラマ50年特別展「平清盛」
今から900年前、初めて武士による世の中を作り上げた平清盛ですが、身勝手な独裁者ぶりが強調され「おごる平家はひさしからず」と、しばしば反面教師的な人物として語り継がれてきました。しかし一方で、寛大で思いやりがあり、臣下にも分け隔てなく接する「人の心を感ぜしむ」やさしい人物だったとの伝承もあり(『十訓抄』)、保元・平治の乱を平定した後は「よくよくつつしみていみじくはからいてあなたこなたしける」(『愚管抄』)と難しい人間関係を調停できる熟慮と力量の持ち主であったと評価されています。
また、時代を先取りして中国(宋)との貿易を推し進める先見性を持ち、大輪田泊(おおわだのとまり、神戸港の前進)を修築し、音戸の瀬戸を開削したと伝えられるように大土木工事を遂行して海上交通を整えました。大輪田泊の工事では、完成祈願のために人柱を立てるのは罪が深いので、代わりにお経を書き写した石を沈めたと、清盛の合理的で人道的な人柄が伝えられています。そして、武士として始めて太政大臣という律令制の最高位につきながら、わずか3ヶ月で職を辞し、出家して、福原(神戸)に隠棲しますが(後に福原遷都を強行することになります)、福原は貿易港・大輪田泊に近い交通の要衝で、国政や経済の新たな展開を見据えていたことが推し量られます。さらには、鳥羽法皇のために峰定寺を、後白河法皇のために蓮華王院(三十三間堂)を造営し、厳島神社を一族の守護神と崇めて、海に浮かぶ壮麗な社殿を建てて数々の宝物を奉納するなど信心深く、平安時代を代表する優れた文化を後世に残しました。
清盛を傲慢と悪行の因果によって滅びた人物として描く『平家物語』でさえ、例えば福原京への遷都などはその悪行の最たる例としながら、白河法皇の御落胤であるためか常人では思いも寄らない「ただ人ともおぼえぬ事どもおほかりけり」と感服を抑えきれません。
近年、平清盛を既成概念にとらわれず客観的に再評価する研究が相次いでいます。NHK大河ドラマ「平清盛」もこの潮流の中にあります。本展は、大河ドラマの放映に連動して、世界遺産・厳島神社に伝えられる国宝「平家納経」などの至宝をはじめ、清盛や平氏にまつわる文化財や美術品、歴史資料など、国宝19件、重要文化財26件を含む140件を一堂に展示して以上に述べた事蹟をたどり、清盛の実像に迫ろうとするものです。
(広島県立美術館 主任学芸員 宮本真希子)
NHK大河ドラマ50年特別展「平清盛」』
【会場】広島県立美術館(広島市中区上幟町2-22)
【会期】2012年4月21日(土)〜6月3日(日)
※会期中無休
【開場時間】9:00〜17:00(金曜日は午後8時まで)
※4月21日(土)は午前10時開館
※入館は閉館の30分前まで
【入館料】
一般 1200円(900円)/高・大学生 800円(600円)
中学生以下 無料
( )内は前売り及び20名以上の団体料金
【問い合わせ先】
広島県立美術館 082-221-6246
≪関連イベントはこちら≫
・記念講演会(1)「清盛がめざしたもの」
・記念講演会(2)「平成版・清盛の誕生」
・広島・厳島講座 (1) (2) (3) (4)
・平家琵琶演奏会 (1) (2)
・舞楽鑑賞会
・雅楽演奏会
・十二単着付けショー
●ギャラリートーク(作品解説会)
金曜日10:00〜/18:00〜(いずれも約1時間)
※本展の入館券が必要です
●1階 ロビーコンサート
土曜日12:30〜(鑑賞無料) |
「保元・平治合戦図屏風」江戸時代、18世紀、仁和寺蔵
重要文化財「鳥羽院御願 毘沙門天立像」平安時代、久寿元年(1154)、峰定寺蔵
京都市指定文化財「平家琵琶 銘 相応」江戸時代以前、個人蔵
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